土曜日の実験室1
「おみくじの怪」
(アスペクト「LOGOUT」95年2月号 941109執筆)
正月である。
正月といえば、おみくじである。
おみくじの文章をちゃんと読んでいる人、何人います?
「吉」とか「凶」とかだけ見て、樹に結びつけている人は反省するように。
あれは「おみくじ作家」と「おみくじ編集者」の、血と汗と涙の結晶なんですから……。
「先生! おつかれさまです」
「おお、大吉出版のキミかね」
「執筆のほうは、はかどっていらっしゃいますか?」
「うーん、ぼちぼちといったところだな。とにかく『日本おみくじ大賞』をもらってから急に仕事が忙しくてなってな」
「『小吉――可もなく、不可もなし。心やすらかに運気を待て』でしたっけ」
「よく覚えているなあ、そうそう」
「あれは素晴らしかったですねえ。『吉』と『凶』とのはざまに存在する、とかく忘れられがちの『小吉』を、思い切ってスポットの当たるステージに引きずり出した、渾身の作品でした」
「いまだから言えるんだがね、『大凶』だけを書き続けて二十年。まさに清水の舞台から飛び降りたつもりの作品だったんだよ……ところで、今日はなんだね」
「実を言いますと先生。なんとかまた『小吉』の新作を一つお願いできませんでしょうか?」「うーん、困ったなあ、いまの仕事が終わったら、すぐに吉凶館のほうにとりかかるつもりなんだが」
「そこをなんとか……」
「吉凶館のあとじゃだめかね」
「先生、それだと再来年のおみくじになってしまいますので」
「まあ、そりゃあそうだな」
「なにせ、"年末進行"ですから」
「いつでもそうだろう」
「なんとかなりませんか」
「うーん、『末吉』じゃだめかね、『末吉』のネタならいいのがあるんだが」
「『末吉』シリーズは最近注文が少ないんで、今年は去年の在庫から使うことにしたんです」「ほう、やっぱり『週刊神社』の記事は本当だったんだな」
「先生これは極秘情報なんですが、近々『週刊神社』に××神社のスキャンダルが、スッパぬかれますよ」
「ああ、あのおみくじがほとんど『大吉』だという」
「ええ。参拝客を"歩くお賽銭"だと思って、あくどい商売をしてきたみたいですけど、もう年貢の納め時ですよ」
「神社が年貢を納めるかね」
「先生、これはあくまで比喩ですから」
「私が言ったのも、あくまでジョークだ。――冗談のわからないやつだ●30点」
「なんですか?」
「知らんのかね? 駄菓子屋なんかに置いてあるだろう」
「えっ、あれも先生の作品なんですか?」
「もう三十年ほど前になるがな。印税もまだ入ってくるぞ」
「それぐらいたつでしょうねえ。"点取り虫"だとか"三角野郎"だとか、死語の宝庫ですもんね」
「いや、そこらへんはもう改訂版でなおったはずだ」
「改訂版まであるんですか」
「もっとも改訂したのも二十年ぐらい前だから"ずっこけ"とか"ぎゃふん"とか"ネオ死語"が満載してある」
「ははは」
「じゃ、良いお年を」
「ちょ、ちょっと待ってくださいよ先生。ここはひとつ人助けだと思って、なんとか『小吉』をお願いしますよ」
「しつこいね、君も」
「プロットも考えてきたんです。もう、これぞ『小吉』の真骨頂というやつを」
「それを早くいわんかね。どれ、見せたまえ」
「はいはい――どうでしょうか?」
「えーと、なになに『失せもの――探せ』って、いきなり突き放すなあ」
「ええ、最初にガツンとやっといて、あとで優しくしようと思いまして」
「べつに『彼女のハートを射止めるテクニック』じゃないんだから」
「はあ」
「それから『待ちびと――こぞりて』……なんだね?」
「ちょっと笑いが必要かなと」
「おみくじで笑わしてどうするんだね」
「根底に流れる『笑う門には福来たる』精神は、読み取っていただけませんか」
「読めんよそんなもの。それで最後に『仕事――したくないなあ』って、これは当てつけかね」
「すいません。それは私のメモです」
「ちっとも役に立たんじゃないか」
「はあ、すいません」
「やむをえん。キミの熱意に免じて、なんとか『小吉』を一本ひねりだそう」
「ありがとうございます。――通信簿がオール5だった◎100点」
「もうそれはいい。で、しめきりの方は今週末でいいかね」
「それが……、もうちょっと早いんですが」
「あさってぐらいかね」
「もうちょっと……」
「おいおい、いつまでに書けばいいんだね」
「はあ、ものがおみくじだけに"きょう"いただきたい」
――おみくじは大切にしましょう。
土曜日の実験室2
「自動改札の怪」
(アスキー「LOGOUT」95年3月号 941221執筆)
自動改札は変である。
使う人間が変なのかもしれないが、それを差し引いても、相当変である。
反論がある人。
まあ、私の話を聞きなさい。
自動改札の導入で余ったものは、何でしょう?
そう、「ハサミ」です。
昔は切符が切りたくて、駅員さんにあこがれていた小僧がけっこういた。
福島君もその一人で、図工の時間に工具箱からペンチを持ち出しては、授業も聞かずにパチパチ言わせて、大関先生にしかられていた。
そういう私は、
「ケッ、子供が!」
と、冷めた態度を見せつつ、こっそり錐でダーツをやって4、5本壊してしまった。
校長先生ごめんなさい。
そういった意味も含めて、自動改札は変という話である。
1.長距離の切符が通れないところが、変である。
ぱっと見は定期券と変わらないのに、なぜか長距離の切符は受けつけてくれない。
なにか技術的な理由があるのかもしれないが、それならタップリ塗ってあるあの磁気は、何のためなのだろうか?
思うに、JRの資材局購入部用紙課(まずこんな名称ではないだろうが)の課長が、思いっきりヨイショに弱い人で、
「課長、これからはやっぱり磁気ですよ」
「そうか、磁気かね」
「この際、全部磁気にしちゃいましょうよ」
「まあ、そうするか」
「さすが課長、お目が高い!」
か、なんか言われて、全部磁気が塗ってある紙を、山ほど購入するはめになったのではなかろうか?
心ある『ラジ○ライ○』愛読者の方、長距離の切符の磁気面のデータを読んで教えてね。
2.裏返しても通れるところが、変である。
これは聞いた話だが、どうやら磁気ヘッドが4つあるらしい。
つまり、どんな向きに入れてもデータが読めるように、ということらしいが、そこまでしなくても、もっと簡単な方法がありそうなものだ。
そういえば、「キセルGメン」みたいなドキュメント番組でやっていたが、自動改札機には、知られざる秘密機能が数々隠されているらしい。
ガルディーンじゃないんだから、思わせぶりはやめなさい!
それに秘密機能があるなら、どんどん使うように。
JRの技術開発局構内機械部自動改札課(ないない)では、
「これだけのデータでは、人体にまったく影響がないとは言えないな……」
「とりあえず、秋葉原だけにしぼって、試運転してみてはどうでしょうか」
「どうしてだね?」
「あれだけ電器店があれば、トラブルがあってもウチのせいだと気付かれないでしょうからね」
「そうか、じゃそれでいこう!」
なんて会話が交わされていないことを強く希望します。
3.切符を入れた人がわからないのは変!
なんてことはない、これは私の経験である。
石川町の駅だったと思うが、自動改札に切符を入れて、そのまま受け取らずにホームヘ行ってしまったことがあった。
2、3分して気がついて改札に戻ったが、なんと改札機に切符がはさまっていたままであった。
その間にも、改札を通る人の流れは途切れていなかった。
???
わかった人!
そう、切符が1コずつずれていたのであった。
さいわい120円の切符で入り、改札機からベローンと飛び出していた切符も120円のものだったので、私としては問題なかったが、ずれちゃった人はさぞかし驚いたことでしょう。
読者の中に心当たりのあるかたがいたら、ぜひご一報ください。
じっくり腹を割って話し合いましょう。
以上の理由をふまえて、自動改札は変という結論を見たわけである。
ちなみに、もっと変なのが、かたくなに自動改札を通ろうとしないオヤジ。
理由はどうあれ、時代の流れに逆らってはいけません。
未来人の立場で「時の亡者になってしまう恐れがある」、とだけアドバイスをしておきましょう。
それにしても、仕事がなくなった大量の改札係たちは、どこにいってしまったのだろうか?
――あっ、有楽町の駅の中に「回転ずし」ができてる!
土曜日の実験室3
「日進月歩の怪」
(アスキー「LOGOUT」95年4月号 950120執筆)
あけましておめでとうございます。
読者の皆さんは、ものすごく"違和感"を感じると思いますが、この原稿を書いているのは、そんな時期なんです。
いやあ、締め切りって早いもんだなぁ。
"ドロップアウト編集者"としては、立場が逆転して初めて知った感覚です。
新鮮、新鮮!
そうか! この"違和感"を少なくするために、作家はみんな締め切りギリギリで書くんだ!――違うって。
昨年から今年にかけて、年賀状を200枚ほど書きました。
しかし、全部書き終えるのに30分ほどしかかかりませんでした。
なぜでしょう?
それは表はワープロでプリントして、裏はコピーしてるからです。
これは、楽!
その上コストもかからない。
ちょうどこの前のイノシシ歳のときに書いた年賀状を見つけましたが、当時すでにコピー!
あれから12年経ったけど、コピー料金は逆に下がってるというところに、科学の進歩を感じます。
そう言えば、今は当たり前だけど、その当時には影もかたちもなかったものって結構あるんですぜ。
1.テレフォン・カード
いわゆるプリペイド・カードのたぐいは、まったく存在していなかったのである。
公衆電話といえば、すべてコイン。
色は赤、青、黄。
そしてダイヤル式。
東京ではまったく見かけなくなったんですが、どこかの地方ではまだ存在しているんでしょうか?
ちなみに昔のテレカを持ってて、
「これ、1枚で3万円するんだぜ」
とか、ほくそ笑んでいる『テレカ小僧』のキミ!
それは、あくまで"売り値"です!
数日前の神田のチケット店での出来事ですが、『おニャンコクラブ』のテレカを持ち込んで来た少年が、おずおずと、
「これ、いくらになりますか?」
と差し出したところ、おもむろに
「400円」
と、言われて、石になってました。
まだ、神田駅の西口で立っているかもしれませんので、暇な人は見に行くのもいいでしょう。
2.ペット・ボトル
今じゃ「猫よけ」でそこらへんにゴロゴロしてるペット・ボトルも、当時は輸入食料品店の「エビアン」(変換ミスで、一瞬『蝦餡』になった。実在するんでしょうか? 知っている方、ご一報ください!)ぐらいしかなかった。
250ml(350mlの缶もなかった!)のジュースで足りないときは、1リットルのガラス容器のボトルを買っていたが、これがやたらと重い。
種類も少なくて、記憶に残っているのは、コカ・コーラかスプライトあたり。
そうそう、「ウーロン茶」なんか、影もかたちもなかったなぁ。
だいたい「水」とか「お茶」とかに、ジュースと同じ金額を払うなんていう"意識"すら存在していなかったんですから、日本人なんて、ゲンキンなものですな。(ここは、宮脇俊三風に)
3.Gコード
Q.当時、画期的だった「テレビの録画方法」と言えば何でしょう?
A.バーコード予約
本体の小さいスイッチをピキピキいじらないと予約できなかったために、ほとんどのおとうさんは、「予約」ということを捨ててかかっていました。
だいたいおとうさんが録画する機会なんて、
「さっき駅前でドラマの撮影やってて、おとうさんカメラのとこ通っちゃったんだよ。映ってるかもしれないから、ビデオ録っといてくれ!」
なんてことぐらいしか、なかったんですから。(高柳家の実話。)
そんな"使わず嫌い"を解決すべく登場したのがこの「バーコード予約」!
ペンでバーコードをなぞるだけで、予約完了なんて、夢のようだ!
――はい、夢でした。
原因はいくつか考えられますが、最大のものは「おとうさんはバーコードをなぞることすら面倒だった」ことでしょう。
ところで、かつて「野性時代」編集部にいたTさんの一家は、誰一人として「予約録画」が出来ませんでした。
見たいテレビがあるときの録画方法はただ一つ。
――家族の誰かに頼む。
うーん、確実かもしれないが、まるで「インド」のようだ!
あっ、ここで大変なことに気がついた。 よく「プリントゴッコ」の横に売ってる「干支イラストブック」。
きちんと保存しとけば、12種類全部そろってたんだ!
土曜日の実験室4
「ヤクモノの怪」
(アスキー「LOGOUT」95年5月号 950213執筆)
”ヤクモノ”って知ってますか?
クサヤとかスルメじゃなくて(初級レベル)、シブガキ隊とかボクサーじゃなくて(中級レベル)、木にぶら下がってる動物とか、小指がない職業の人でもありません(上級レベル)。
つまり文章中にある、ひらがなとか、漢字とか、数字じゃないもの。――だったよな?
まあ、とにかく「単体では読めないもの」と思っていただければ、間違いないでしょう。
たとえば()なんかは、「かっこ」と呼ぶけれども、
幸子は(ほんとうかしら?)と思っていたに違いない。
なんていう文章の場合、
「さちこは かっこ ほんとうかしら くえすちょん かっことじ……」
と、読む人はいないでしょ。
たまに電話で校正している編集者が、こんなことを言ってますが……。
そういった前提をふまえて、今回はエリートサラリーマンのための「ヤクモノ」講座です。
芥川龍之介じゃなくて(超上級レベル)。
1.『』の怪
『』は「二重括弧」と呼びます。
まるで中国の妖怪のようですが、そんなにナマやさしいものではありません。
これは、使い方によっては、言葉の意味をすっかり逆転させてしまうという、恐ろしいパワーを姫野カオルコ。
例を挙げましょう。
そんなわけで、我々は彼の『豪邸』を訪問することになったのである。
きみの『ほっぺがおっこちそうな』手料理を、一度食べてみたいものだね。
なんか「いやみ〜」な感じが出てるでしょ。
ちなみにこういう使い方を、編集者は「オセロ」と呼びます。
うそです。
2.!?の怪
これは、女性週刊誌やスポーツ新聞で良く使う手です。
「本当か嘘かわからないよ」よりは「嘘だよ〜ん」に近いキャラクターですね。
宅配便のハザードランプが「ごめん、ちょっとだけ置かせてね」よりも「これ点けてれば駐車してもいいんだもんね」(椎名誠風に)に近いキャラクターなのと同じと言い換えたほうが、うわぁ、かえってわかりにくいや!
松田聖子に金髪の新恋人出現!?
つまりこういうことですね。
これを逆手にとって、ものすごく当たり前なことに使うと、ものすごくウソっぽくなります。
10円玉で公衆電話がかけられる!?
「ニャー」となく猫が出没!?
なお、結婚式の祝電などに使うと、より効果的でしょう。
いつまでもお幸せに!?
3.(笑)の怪
そう、対談にあるやつです。
イマジネーションが喚起されて良いのですが、
「自分で言っちゃったりして」(笑)
これをいじくって、
「自分で(笑)言っちゃったりして」
と、移動したりすると、なんか変でしょ。
ちなみに、まじめな文章にちりばめると、どうなるか、実験してみましょう。
米政府は(笑)、第二次世界大戦終結五十周年にあたる今年(笑)、年間を通じてさまざまな記念行事を計画しているが(笑)、この度(笑)、その詳細が明らかになった(笑)。
揚げものを苦手にさせてしまう理由のひとつは油ハネ(笑)。油ハネはほとんど素材に含まれる水分が原因ですから(笑)、下ごしらえの段階で(笑)、表面の水気をしっかりとっておけば、安心(笑)。
時節柄、もっと爆笑のネタがあるんですが、ズイマー(専門用語)なので、やめておきます。
あと、ワンポイントで、
牟田悌三(笑)。
というのもイケますね。
私だけですか?
それでは次回(笑)も、この『エッセイ』をお楽しみに!?
土曜日の実験室5
「陽気な人々の怪」
(アスキー「LOGOUT」95年6月号 950314執筆)
今年は冬と春との境目がはっきりしなかった気がしませんか?
世紀末なんだなぁ。
結論が早い!
さすがわては江戸っ子でおます。
といったわけで、今回はニッポン放送の春の風物詩をつらつら綴ってみたいと思います。
題して「陽気な人々」。
放送局には、なぜか必要以上にテンションが高かったり、低かったり、交互にやってきたりする人たちが電話をかけてきます。
NHKのように、専門の部署があればいいのですが、ニッポン放送にはありません。
すると、なぜか交換嬢はそれを私の机の電話にまわします。
リスナーの生の声に触れられるのは、とってもウレシイのですが……。
はぁ。
1.虹がすごいんです!の人
「もしもし」
「あのぉ、ニッポン放送ですか?」
「はい、そうですが」
「いま、生放送やってますよね」
「ええ」
「私、杉並に住んでるんですが、ウチのほうで虹がスゴイんです」
「……は?」
「公園の方向なんですけど、スゴイ虹がかかってるんです」
「はぁ?」
「一応お伝えしておこうと思いまして」
「…………」
「これ、放送で流れますか」
「えっ、いや、それは何とも……」
「別に、いいですから」
「は、はい」
――ガチャ。
本当に、どうもありがとうございました。
セブンスターのセロファンのところに一万円をはさんで渡したいので、有楽町のパチンコ屋「ポオル」まで来てくださいね。
2.電波関係の人
まずは、自分の頭がチューナーになっちゃう人。
「電波が刺さるから止めろ!」
この方は、数年前にはしょっちゅう連絡があったらしいんですが、最近はぱったりと途絶えてしまいました。
理由は簡単です。
気転の利くアルバイトの女の子が電話に出て、
「ああ、それはウチじゃなくて、××放送ですよ」
と言ったそうな。
てっぺんかけたかほーい。
代わりに最近毎日かかってくるのが、
「妨害電波でニッポン放送が聞こえない!」
という人。
「こちらから妨害電波を出しているのではありません」
と答えたら、
「じゃあ、どこに電話したらいいんだ!」 と、機嫌を損ねてしまいました。
世田谷の方で妨害電波を出している方、私にためにも電波を止めてください。
最後に愉快なのが、
「俺が世界中の電波権を持っている!」
という人。
「ただでニッポン放送に貸してるんだから、番組に俺の意見を取り入れろ!」
ということなのですが、
「NHKみたいな番組をやれ!」
というのは……。
ところで、この方はNHKには何て電話をしてるんでしょうか?
3.目標をあやまっちゃった人
「バカヤロー、なんだ今の奴は?」
「はい?」
「ふざけたこと言いやがって!」
「はぁ」
「すぐ謝らせろ!」
「あの、すいませんが、どういった発言についてでしょうか?」
「どうもこうもねえよ、ふざけやがって、いま政治家がどうしたとか言ってただろ!」
「政治家の話ですか? あの、具体的にはどういった……」
「緑の背広のやつだよ!」
「は?」
「一番左の、眼鏡の男だよ!」
「あのぉ、どちらにお電話をおかけですか」
「なんだ! わかってかけてるんだよ、こっちは!」
「すいませんが、こちらはラジオ局なんですが」
「……そうか」
――ガチャ。
そんなわけで、毎日必要以上に楽しく過ごしています。
ちなみに編集者時代に出会った一番"陽気"な人は、電話で自分が書いた小説のあらすじをしゃべり出した人です。
あんまり長いんで、途中で電話を切ってしまったんですが、30分ぐらいしてふと気がつくと、受話器が外れたままになっていました。
もとに戻そうと、手をのばすと、
『……で、その男はもう一度、山に登るんです。冬ですから、すっかり……』
土曜日の実験室6
「まずいものの怪」
(アスキー「LOGOUT」95年7月号 950419執筆)
CMにはいくつかの規制があります。
そのひとつが「最大級であるという表現をしてはいけない」というもの。
つまり、
「いま、一番売れているのが××!」
とか、
「○○が、どこよりも安い!」
というのは、禁止されています。
「えーっ、やってるじゃん」
という、横浜方面出身のあなた。
よーく聞くと、微妙に表現をごまかしてますから、執拗なチェックを怠らないように!
ちなみに、風邪薬のCMには、
「使用上の注意をよく読むように」
という指示と、
「注目を促すピンポンというチャイム音」 を入れなくてはなりません。
ためになるなぁ。
……あれれ、この導入部から、どこに話を持って行くんだったっけ?
忘れちゃったんで、小咄をひとつ。
導入部が得意な女優さんがいるねぇ。
――カトリーヌ・ドオニュウブ。
おーい山田くん、木久ちゃんの座布団ぜんぶ持ってってくれ!
そんなわけで、今回はまずいものの話だい!
1.ウィスキー”A”
これはまずい!
においがアルコールっぽい→1アウト
口に含むとピリピリする→2アウト
のどごしがイガイガする→3アウト
チェインジ!!
「酔っ払ったら、どんなまずい酒でも大丈夫!」
と、豪語していた友人にすすめてみたところ、ひとくち飲んだとたんに、マーライオンになってました。
――熊谷真美でなくて。(難易度C)
一時期は人気イラストレーターのアニメCMもバンバン流れていたし、シンプルなデザインの瓶と、コルク風のラベルがおしゃれだったんですが……
当然のごとく、あっという間に店頭では見かけなくなりましたね。
噂によると、在庫はすべてスイス政府によって買い占められて、遭難救助犬の首についている樽の中に入っているそうです。
犬「ワンワンワン」
人「助かった……ゴクゴクゴク……ブーッ、なんだこれは!」
犬「ウィスキーですが……」
人「なんか悪いもの混ぜて飲ませただろう !」
犬「な、なにを根拠にそんなことを!」
人「相手が犬だけに、ドック(毒)じゃないかと……」
おーい山田くん、こん平さんの座布団も、ぜんぶ持ってってくれ!
2.自動販売機のハンバーガー”B”
「コインスナック」って知ってますか?
昭和50年前後に存在していた、タクシーや長距離トラックの運転手さんのための無人店舗のこと。
24時間営業で、ドリンクやらインスタント食品やらの自動販売機がズラーっと並んでいるだけの、とっても"ブレードランナー"なスポットでした。
市ケ谷の大日本印刷の脇に、まだ一軒残っているので、興味のある坊ちゃん、嬢ちゃんはこちらにどうぞ!
で、そこで食べられる"あたたかいもの"といえば、日清のカップヌードルか、マルちゃんのきつねそば、そしてこのグー……あわわ、"B"しかなかったんです。
はっきり言って、味は「紙」。
最初は、
「紙箱ごとレンジで温めてるからかしら?」
と思っていたんですが、何度味わっても(こらこら)味は「紙」。
ケチャップもマスタードも乾ききっていて、バンズをはがすと赤と黄色のロールシャッハテストができました。
信じられないことに、この商品はまだ存命しています。
余談ですが、同じシリーズで「チーズバーガー」もありまして、味は……
「チーズ風味の紙」。
3.成城の喫茶店”C”のカレー
「まずそうな店ならカレーを注文しろ」
と、アメリカインディアンの言い伝えがあるように、カレーは当たりはずれの少ない食品として、江戸時代から庶民に親しまれてきました。
なのに……
ぶわーっ、まずかった!
もう10年以上も前になるけど、あのまずさは一生忘れられません。
だって、「カレーの味がしない」んですぜ!
具もちゃんと入っていて、色もターメリックの黄色で、舌ざわりもカレーなのに……
もし、この世の中に「無味無臭のシェービングクリーム」が存在していたら、まさしくそんな味です。
良くわかんないけど。
さて、この話には続きがあります。
この「にせカレー」を前に石になっている私にむかって、カウンターのオバチャンはニヤッと笑いながら、
「おいしいかい?」
土曜日の実験室7
「ラジオの怪」
(アスキー「LOGOUT」95年8月号 950519執筆)
テレビでたまに「地方のオモシロ番組特集」とか、「東京で見られないユニークCM」なんていう番組をやるじゃないですか。
これが意外とおもしろい!
言っちゃ悪いが、センスがなさすぎて、笑っちゃうっていう感じ。
つまり、K川書店のO部長の「ダジャレ」っていう感じです。(社内回覧するときは、ここはマジックで消してね。)
でもでも、侮ってはいけません。
「引越しのSカイ」なんかは、この手の番組がきっかけで、ついに東京に逆輸入されましたからね。
パチパチパチ。(うわ、プリミティブなリアクション!)
しいて言えば、いまだに、「Sカイ」に引越しを頼んだ人というのを、聞いたことがないのが、気がかりですが……
さて、これが地方のラジオ局の場合だとどうでしょうか?
そんな前ふりをかっちり受けたかたちで、今回は、各地方ラジオ局の"看板番組"と、人気パーソナリティを紹介しましょう。
【番組編】
1.山形放送「パチンコタッグ選手権」
これは、激しい。
どうやら土曜日の夕方に、パチンコ店さんから、ゲーム風景を「生中継」するという番組らしいんですが……
誰か想像つきますか?
「……さあ、124番の酒屋の鈴木さん、ゲーム開始15分にして5回目のフィーバーです! いやスゴイスゴイ。番組始まって以来の、最短新記録でしょう!」
――たぶん違うな。
さらに、実況するだけではあきたらず、店長やお客さんに、"パチンコへの思い入れ"を語ってもらうコーナーもあるそうです。
2.ラジオ福島「スーパーナイト今夜も一直線」
この番組の、金曜日の内容がスゴイ!
「タクシードライバーの話や、ギリシャ神話のコーナー、リクエストもオンエア」
何なんでしょうか?
まさか、タクシーの運転手さんがリクエストしたギリシャ神話を、チャート別に紹介する番組だったりして。
「……そしてイカロスは、太陽に向かって飛び立ったのでした。というわけで、今週は2ランクダウン。7位にランクされた『イカロス』を紹介しました。福島観光タクシーのラジオネーム"セナ"さん、リクエストありがとう!」
――好きでボケてんだから、ほっといてよ!
ちなみに「イカロス」を横書きにすると、学生運動をやっていた人は「働堅」と読んでしまうので、そっち方面に友人がいる人は、十分気をつけるように。
3.大分放送「ハローCQ」
「えっ、どこが変なの?」
いきなり、『面接の達人』の自己紹介文の凡例のような、もしくはX文庫のような始まり方をしてしまいました。
内容は、アマチュア無線ファンのための番組ですから、推してシルベスタスタローンでしょう。(ナカグロはどこに入るんだっけ?)
問題は、今年の4月にスタートした新番組だ、というところです。
万に一つ、ハムが大分だけで流行っている、という可能性も捨て難いですね。
なんとなく「ハム」と「大分」と、字面が似てるし。
ちなみに、この番組の紹介に「無線家たちの橋渡し役」とあります。
きみたちは無線家同士なんだから、無線で直接話したまえ!
【パーソナリティ編】
1.STVラジオ 神原智巳
「思ったことをズバリ言ってのける反面トンチンカンなおとぼけで人気上昇中!」
もしや"××××"ということでしょうか?
大きなお世話ですが、「反面」の使い方が間違っています。
2.北日本放送 森野信生
「西ベルリン芸術大学声楽科卒のバリトン歌手」
リスナーの自宅にでかけての、出前コンサートも企画しているそうです。
他人を巻こむんじゃありません!
3.岩手放送 江幡平三郎
「岩手放送のひょうきんアナウンサー」
ちょっと前の流行語はやめさいって!
4.北日本放送 岡田輝幸
「北日本放送の岡P」
こらこら!
5.青森放送 夏目浩光
「ガチョウ兄さんこと」
ちゃんと由来を説明してくれ!
さあ、良い子の読者の皆さん。
だまされたと思って、一度ラジオを聴いてみましょうよ。
――あっ、だまされた!
土曜日の実験室8
「もったいないの怪」
(アスキー「LOGOUT」95年9月号 950619執筆)
かつて"もったいないオバケ"というのが流行したのを、知ってますか?
これは「日本昔ばなし」のパロディで、水道を出しっぱなしにしたり、電気を点けっぱなししたり、ビールを注文しすぎて、何本も飲み残したまま居酒屋を後にする子供のところに、
「もったいなーい、もったいなーい」
と、言いながら"もったいないオバケ"が出没する、といったものです。
おそらく「公共広告機構」かなんかのCMだったと思いますが、効果はあったんでしょうか?
ガンガン流れていたわりには、なかったような気もするけどなぁ。
――そもそも、「公共広告機構」って何やるところなの?
まさか「公共広告機構」のCMをつくることそのものが仕事だったりして……ああ、もったいない!
というわけで今回は、町で見かけたもったいないものを紹介したいと思います。
1.コンビニの袋
ね、思うでしょ。
昔は小さいモノなんかは茶色の紙袋に入れてくれたけど、今は何でもビニールの袋に入れるのは「マニュアル」なんでしょうか?
使い道がないったらありゃしない!
かといって、わざわざ別の袋を持ってでかける場所でもないし、
「袋はいりません!」
と言えるのは、せいぜいおにぎり一個買って、その場で食っちゃえ! とかいう状況だけだし。
ここはひとつ、すべてのコンビニの袋を、東京都指定の炭カル入りゴミ袋にしてしまうのはどうでしょうか?
それも、ポリバケツ用のデカいやつに。 嫌ですか? そうでしょうねぇ。私も嫌です。
2.銀行のATMの横のオバサン
これも無駄でしょう。
問題は、オバサンに「基本知識」以上の能力がないことです。
つまり、「初めて目の前にする機械社会の象徴=ATMの前に立ちつくす老人」といったところがオバサンの理想的なターゲットであり、彼らに「ATMのバイエル」を教える以上のオプションを、オバサンは受けつけないのです。
実際、他のトラブルで機械がストップしているのに、シメシメといった顔で近づいてきて、
「あら、どうしました?」
と、ハスに構えながら、
「もう一度カードを入れてください」
などと、やんわり命令を下した上で、とりあえず順番通りにスイッチを押し直されて、やっぱりだめで、何分もたってからサービスマンが駆けつけるという目に私は何度も遭遇しました。
「案内が専門の係なら、ちゃんとしろ!」と言えない、気の弱い同士諸君。
銀行に行くたびに勇気をふりしぼって、あえてATMの前でマゴついたふりをして、
「どうしました?」
と近づいてきたオバサンに、
「当座預金から、貯蓄預金への振り込みは出来るんですか? その逆は? 手数料は? アメリカの第21代大統領は? シオマネキングの弱点は?」
なんて、たたみかけてみてはいかが?
3.ワープロ用感熱再生紙
ワープロ関連商品で"もったいない"と言えば、まず「ケイ線だけ引いたインクリボン」をイメージしますが、最近は節約モードがあるし、その気になれば裏返して何回でも使えるので却下。
あと、カラー印刷用のインクリボンで、赤・青・黄・赤・青・黄……が30センチくらいずつ繰り返してつながっている、というのがありまして、これを「単色印刷」で使っちゃうのは"もったいない"なぁと思いますが、これももうモデルチェンジしちゃったので却下ドゥードゥルドゥ。
代わって浮上してきたのが「感熱再生紙」です。
えっ? どこがもったいないって?(この手法、ずっと使いたかったんだ!)
普通の感熱紙より「高い」んです。
それも、モノによっては約2倍!
納得いかないなぁ。
と思っていたら、さっきもっと"もったいない"感熱紙を見つけてしまいました。
どういう使い方を想定してるんだか、その名も「両面使える感熱紙」。
表裏が見分けられない重役かなんかのアイデアだったりして……あーもったいなーい!
いやぁ、あんまり貧乏性なのも考えものですね。
かつて『Y性時代』で編集者をやっていたN田T雄さんは、自他ともに認める無類の貧乏性で、物心ついてから以降、シャープペンの替芯のケースを全部とっておいたそうです。
本人曰く、
「良くわかんないけど、なんか後で使えそうじゃない」
けだし明言ですな。
最後になりましたが、誰か「テプラのはしっこ」の有効的な使い方をアドバイスして下さい。
土曜日の実験室9
「オタクの怪」
(アスキー「LOGOUT」95年10月号 950718執筆)
相変わらず街に棲息し、確実に増殖しつつある"オタク"。
雑誌や新聞や、はたまた文化人類学者までもが"オタク族"なる集団を分析しようと試みましたが、なにをして"オタク"と呼ぶのか、未だにハッキリしません。
理由は簡単。
そんなことマジメにやるヤツが"オタク"だからだあーっ!
私もかつて、ウルトラマンの怪獣の弱点や、ストーリー展開の細部まで覚えていることから、"オタク"呼ばわりされたものでした。
違います。
これは"オタク"ではありません。
「記憶力が異常に良い」だけなのです。
そんな辛い経験を乗り越えて、私は"オタク"を識別する画期的な方法を発見しました。
それは「見かけで判断する」こと。
どうです!
趣味や、行動パターンや、使用言語で判断するのではなく、「見かけで判断する」というのは、ある意味で非常に分かりやすいでは有馬稲子。
ここで私は宣言します。
次の要素に当てはまる人は"オタク"です。
1.ファッションが黒い
"オタク"のファッションのポイントは、黒を多用するところです。
今の季節なら、黒いTシャツに、ブラックジーンズ、黒いベルトに黒い革靴、黒いバッグを肩から下げた「巡礼のネガ」のような"オタク"を、秋葉原からお茶の水方面で目にすることができます。
そして、ここから謎なんですが、なぜか靴下だけは「白」です。
かつて"オタク"の集団をカラーグラビアに掲載しようとして、途中からモノクロに差し替え、手分けして唇だけ赤マジックで塗って経費を浮かしたことがあります。
部数が少ない雑誌で良かった。
――嘘です、最後の行は本当だけど。
2.スタイルが悪い
なぜか"オタク"に、ちょうど良いスタイルの人はいません。
背の高い人はトコトン高く、低い人は、徹底的に低い。
同様に、痩せている人はガリガリで、太っている人は、デブデブです。
その上、体にちょうどいいサイズの服を着ていないので、どれが本当のスタイルかも分かりません。
たのむから、靴下のワンポイントが見えるところまで短くなったズボンをはくな!
3.ブランド品を持っていない
"オタク"を、どんなに一生懸命観察しても(するなよ)、ブランド品はおろか、メーカーがわかるものは、ほとんど身につけていません。
辛うじて、見え隠れするワンポイントの靴下が、「マンシング」やら「アーノルドパーマー」やら「ソニー」やら「ホンダ」やら「ノモ」だということが、わかるくらいです。
関西のニューファミリーのほとんどが、ミキハウスとルイ・ヴィトンだけで出来ているのとは、訳が違います。
理由は何なんでしょうか?
私の友人の筒井くんは、中学生のときに赤系統の服を一切持っておらず、
「何で?」
と聞いたところ、
「赤は女の色だから」
と答えて、周囲の度肝を抜いたことがありました。
つまりは、これと同じ理由だと思います。
――ちゃんと説明すると"オタク"っぽいので割愛しますが。
4.髪の毛が長い
オシャレな長髪と、"オタク"の長髪はどこが違うのか?
前者が「伸ばしている」のに対して、後者は「伸びている」のです。
これもまた、なぜ伸びているのかが、ハッキリしません。
腰のあたりまで伸ばして、ミラーのサングラスをかけて、カンフーの衣装を身にまとった"オタク"を見かけたことがありますが、何かのキャラクターのつもりなのでしょうか?
もしかして「伊賀のカバ丸」ですか?
JACの黒田くん主演で映画化されたという。
最後に「"オタク"は恋人も"オタク"」という、日蓮上人のありがたいお言葉を紹介して、結論に代えさせていただきます。
以上が、幕張の「おもちゃショー」で観察した私の研究レポートです。
ちなみに「おもちゃショー」は仕事で行きました。
決して心の底からは、楽しんでいません。
「ウルトラマン」などの一部に、懐かしさを覚えましたが、それは"世代"だからです。
したがって、私は"オタク"ではありません。
"オタク"じゃないってばぁ!
シクシク。
はっ!
土曜日の実験室10
「暗黙の了解の怪」
(アスキー「LOGOUT」95年11月号 950821執筆)
法律でもないけど、道徳でもなくて、分かってる人は当然のことで、知らない人は馬鹿にされる決まりごとってあるじゃないですか。
たとえばタクシー。
ワンメーターで一万円札を出すと、
「えーっ、お客さん細かいのないの! まいったなー」
などと怒られたりします。
よしんば怒られなくとも、相当ムッとされます。
理不尽ですが、やむをえません。
なぜなら、それが”暗黙の了解”というものだからです。
”沈黙の艦隊”ではありません。
この、別名”お約束”と呼ばれるボケも、広い意味での”暗黙の了解”です。
ケッ、と思ったあなた!
ここで声を出して笑うのも、このエッセイに対する”暗黙の了解”なので、ひとつよろしく!
1.エスカレーターの右あけ
エスカレーターの右半分は、人がひとり通れるだけ空いています。
それは、急いでる人のための専用通路だからです。
さながら高速道路の様ですが、違うのはどんなに混んでいても、エスカレーターの場合は、そのスペースが絶対に確保されている点です。
これは(エスカレーターの速度+走る速度)となり、実に効率が良いように思えますが、実は思わぬ"盲点"があります。
山田孝夫が座布団を持って来てしまうのです。
いや、それもそうですが、この"暗黙の了解"を知らない人に、道をふさがれてしまうことが、ままあるからです。
イラついても怒っても、こればっかりは"暗黙の了解"ですから、しょうがありません。
その場合は、下りなら上り、上りなら下りのエスカレーターに飛び移って、全力疾走してください。
階段でも良いですが。
2.エレベーターの階数表示とにらめっこ
テレビドラマの"暗黙の了解"には、私も悩まされたクチです。
一番納得がいかなかったのが、
「スポーツ部のコーチは、ひっきりなしに怒鳴っていなくてはならない」というシチュエーションでした。
「ダッシュだ、ほら何やってる、腰がはいってないぞ、どうした、たるんでるぞ!」
こんなことを何時間も叫んでいる人は、まず実在しません。
あと、「まっすぐ前を見て階段を降りる」にも泣かされました。
はっきり言って、転げます。
それに比べれば、「エレベーターの中で、階数表示を見ない」なんて、可愛いものですよね。
この章は無理矢理こじつけたようで、オチがありません。
ものがエレベーターだけに、オチちゃいけねえや。
トホホ(ちょっと不本意)。
3.トイレットペーパーの三角折り
いったい誰が、始めたんでしょうか?
これほど意味がない行為も珍しいでしょう。
隕石落下説、気温低下説、妊娠説などなどが噂されている中、私としては、「恋人に別の彼女がいるんじゃないかと心配になり、とりあえず自分の存在感だけはアピールしておこうと、まずは恋人のマンションのトイレットペーパーの端っこを三角に折った内気な女子大生」という、ジェスチャーゲーム問題説を支持します。
しかし、何がおかしいって、三角に折ってある方が、より上品だというイメージが浸透しきってしまったところでしょう。
ちなみに帝国ホテルのトイレットペーパーの端っこは"奴さん"に、迎賓館に至っては"鶴"になっているそうです。
4.お菓子の一個残し
これは、ごく最近デビューした"暗黙の了解"なので、簡単に説明します。
「みんなでお菓子を食べるときに、必ず1個残すこと」――説明しなくても良かったですか?
これも、私は納得がいきません。
それまでバクバク食っていた人には何のお咎めもないのに、最後の一個に手を伸ばそうとした人には、全員からプレッシャーをかけられるのはなぜでしょうか?
危険なことに、この"暗黙の了解"は、フォーマルな席から端を発し、ついには家族や恋人同士といった、気の置けない関係まで、侵食しつつあります。
おかげで夢の島には、一個だけお菓子が入った箱が、山と積まれている有り様です。
さて、ここで私はこの「一個残し」を撲滅する画期的なプランを提案しましょう。
すべてのお菓子には、ダミーのお菓子を必ず一個入れておくのです。
ダミーを取った人は、再びそれを箱に戻し、別のお菓子を手に取れば良いのです。
名づけて「ジョーカー大作戦」!
ところで、この作戦の唯一の問題は、ダミーだと気付かないで食ってしまうヤツがいるかもしれない点ですが、それは毒物を混入させておくことで、良しとしましょう。
みなさんも、ダミーを手にしてしまった時は、こうつぶやきましょう。
「ダミーだこりゃ!」